WBS

ソフトウェア開発プロジェクトのスケジュール管理をするための WBS について学ぶことができます。

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目次

0. Introduction

  • 対象となる読者
    • ソフトウェア開発プロジェクトにおいてスケジュール管理をする必要がある方
  • 本記事の価値
    • ソフトウェア開発プロジェクトのスケジュール管理をするための WBS について学ぶことができます。
  • 前提
    • 特になし

1. WBS とは

WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクトのスケジュール管理に使われる手法の一つです。WBS には、日本語で「作業分解構成図」という意味があります。 つまり、プロジェクトの作業工程を「作業要素ごと」に細かく「分解」し、「構造化」することで管理しやすくするという考え方です。WBS を作成する際は、それぞれの作業に必要な人員やコストを割り出し、全体の作業計画を決めていきます。WBS を作るメリットは、以下のようになります。

メリット

  • やるべき作業が明確になる
  • 綿密なスケジュールを組むことができる
  • 役割分担がしやすくなる
  • 工数の見積もりの精度が向上する
  • 進捗管理がしやすくなる

2. WBS を作成する手順

1. 作業の細分化

作業を、まず大まかな概要として定義した後、プロジェクトが進捗に伴い実際の作業が明らかになっていくのに従って、細分化していきます。 細分化は、下位レベル作業が上位レベル作業の必須要素であり、かつ十分であることを確認しながら進めます。

2. WBS による進捗とコストの管理

細分化された作業に対して、作業成果物とその価値、担当者、必要工数、開始完了日程の予定、実績を付けて管理し、 進捗やコストの予測することをアンド・バリュー・マネジメント(EVM)と言います。 EVM による管理を行う場合、以下の項目を作成します。

  • 作業: (例) 外部設計
  • 作業状況: (例) 完了
  • コスト予測(H): (例) 24
  • 開始予定日: (例) 6/1
  • 完了予定日: (例) 6/5
  • コスト実績(H): (例) 25
  • 開始実績日: (例) 6/1
  • 終了実績日: (例) 6/6

コスト予測は、この作業を行うのに必要な工数を表しますが、作業にって出来上がる成果物の価値としても使用します。 開始実績日には、作業開始時点で記入します。コスト実績と終了実績は、作業状況が完了した時に記入します。

2-1. 出来高の計算

WBS の準備ができたところで、まずは作業がどれくらい進んでいるかという出来高を計算します。 作業の出来高は、完了した作業のコスト予測欄(この場合は、作業成果物の価値と捉えるのが妥当)を合計して求めます。 すべてのコスト予測を足した値を分母として、出来高を分子とすれば、作業の完了率を求めることも出来ます。 注意すべきは、出来高の計算には予測コストを使用し、実績コストは使用しない事です。

  • EV(Earned Value) = Σ(完了した作業のコスト予測)

2-2. スケジュールの評価と予測

スケジュールが進んでいるのか遅れているのかを評価する場合、EV から PV(そこまでに作成しているはずだった価値) を引いた値である SV(スケジュール差異)を見ます。この値がマイナスであれば、その分、プロジェクトの完了が遅延することになります。 また、EV を PV で割った SPI(スケジュール効率指数)が 1 を超える場合はスケジュールが予定より進んでいることを、1 より少ない場合は遅れていることを表します。 実績が予定通りであれば、この値はちょうど 1 になります。

  • SV = EV- PV
    • SV(Scheduled Variance): その時点までに完了した作業のスケジュール予定と実績差異
    • PV(Planed Value): その時点までに完了しているはずだった作業の価値
  • SPI = EV / PV
    • SPI(Scheduled Performance Index): スケジュールの遅延や前倒しを予定と対比した割合。1 を下回れば遅延、超えれば前倒しを表わす。

SPI は 1 を下回っても超えても、その値は予定とのズレを表し、なんらかの是正措置となります。 どれくらいのズレまでを許容するかはプロジェクトの事情により異なります。 一般的には、上下に 0.05 ズレたところで是正措置(タスクの見直しや要因投入など)を実施するトリガとする場合が多いようです。

2-3. コストの評価と予測

スケジュールを SV と SPI で評価するのに対して、コストは CV(コスト差異)、CPI(コスト効率指数)および EAC(完了時コスト予測)で評価します。 CV は、その時点までに発生しているコストの差異は表し、CPI は予定通りのコスト消化を 1 とした時のコスト実績の割合を表します。 また、EAC は、このままプロジェクトが進行したときの完了時コスト予測です。

  • CV = EV - AC
    • CV(Cost Variance): その時点までに完了した作業のコスト予定と実績の差異
    • AC(Actual Cost): その時点までに完了した作業の実績コスト
  • CPI = EV / AC
    • CPI(Cost Performance Index): コストの実績を予定と対比した割合。1 を下回れば超過、超えればコスト未消化を表す
  • ETC = (BAC - EV) / CPI
    • ETC(Estimate To Complete): 今後発生する残作業のコスト予測
    • BAC(Budget At Completion): 完了までの当初予算
  • EAC = AC + ETC
    • EAC(Estimate At Completion): 完了時のコスト予測

参考文献

「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?49 のトラブルから学ぶプロジェクト管理術」 細川義洋,日本実業出版社

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